『intimacy』森栄喜、デザイン:森大志郎、発行:ナナロク社、発売日:2013年12月14日、仕様:A4変型(188×195mm)、上製、264ページ、定価:3,800円+税 -- 何気ない日常を切り取る、この絶対の孤独と、この狂気はなんだ。。。 山本耀司(ファッションデザイナー) 森栄喜の写真たちに潜在し変容する「退屈さ」の充実した時間を、これまで誰が、これほどの率直さと洗練において写真に撮りえただろうか。ここには、かけがえのないまばゆい生の一瞬が息づいている。 新城郁夫(琉球大学教授)巻末論考より -- 前作『tokyo boy alone』では、被写体である青年たちの部屋に森が赴き、その空間において写真を撮るという手法を取りながら、都市における青年たちの肖像に光を当ててきました。しかし、森が「被写体に自己を投影したセルフポートレイト」と言うように、意識的な取り組みとして、被写体と写真家との関係性を語ることはありませんでした。 今回刊行された写真集『intimacy』では、自身の恋人や友人との1年間の記録として、時に、森自身も被写体として登場しながら、そのタイトルの示す通り、「親密な」関係性が描かれています。すべて35ミリのスナップショットを通して構成された本作では、日常の機微を、そして彼らと過ごす時間の親密性を丁寧に描きながらも、そこに発現する自身の感情をも焼き付けたいという森自身の欲望が、荒々しくも写真の中に現れます。 それらの写真を撮り続けるという行為は、日常の中に潜みながらもこぼれ落ちていく瞬間の軌跡を記す行為であり、誰かを想い、求める感情の集積でもあり、本作『intimacy』は写真集という名の「日記」的作品であり、森にとって挑戦となる作品となっております。 -- 第39回木村伊兵衛写真賞・受賞の言葉(アサヒカメラ2014年4月号より)森 栄喜 高校生の頃、父親のカメラをもらって以来、写真を撮り続けてきた。はじめは母親や風景を撮っていたが、いつしか男性ポートレートばかりを撮るようになった。大学卒業後、帰国してからは、僕が友人の部屋を訪ねて、相手の空間の中での彼らを撮影し続けた。そこで出会った彼らとの撮影を通して見えてきた、東京のワンルームに暮らす彼らの生活、孤独、そしてそれぞれが思い描く未来は、僕のそれとも重なり、そこに映し出される彼らの肖像はそのまま僕の肖像となった。撮影を続けて行く中で僕らは共感し、互いの存在について肯定し合い、少し力づき、またそれぞれの暮らしへ戻って行く。彼らを撮影し続けることにより自己の肖像の輪郭に少しだけ触れることができたような気がして、それらを纏めあげた作品が前作の写真集『tokyo boy alone』だった。 今回受賞した『intimacy』は、まだ恋人ですらなかった彼との出会いから始まる、ひとつ前の夏から新しい夏への1年間の記録だ。そこには朝起きて、「まだ眠いね」と言いながら一緒にトーストを食べて、歯磨きをして、出かけて、ちょっとひと休みして、また一緒に歩き、帰宅して、ご飯を食べて眠る、といったような2人の日常が、時系列に、そしてひとつの映像作品のような形で収められている。僕と恋人とのことを端的に言葉にすると「男同士のカップル」かもしれないが、他のカップルと同じように相手を大切に想い(でも時々喧嘩もして)日々を一緒にすごす。それは僕自身にとって眩しく、すごく愛おしく、そして同時にどこか懐かしさも感じるものだった。なぜならそれは、『tokyo boy alone』を撮影していた20代の僕自身が、あの頃思い描いていた未来の景色だったと気づいたからだ。そんないたって普通で幸福な毎日は、それでいて未だ僕自身にとっては切実ななにかで、と同時に美しい、とても特別なものです。そしてそんな僕と彼との普通の生活や普通の親密さが社会にとってもまだ異質なものとして扱われるとするならば、その事実は僕を悶えさせ奮い立たせるのです。 -- 写真集"intimacy"は、全国の書店、amazonでご購入いただけます。 For international readers, "intimacy" is now available in Nitesha(online bookshop) -- back |